世界最高水準の遠赤外ジャイロトロン
赤外領域開発研究センターは、独自に開発した世界最高水準の遠赤外高出力光源「ジャイロトロン」を武器に、電波と光の中間に位置し、電磁波の「未踏領域」と言われている遠赤外(テラヘルツ)領域の総合的な開発・研究を行っています。
遠赤外(テラヘルツ)領域の世界的拠点
センターは、国内外多数の研究機関と学術交流協定や共同研究覚書を締結し、グローバルな共同研究と学術交流を展開し、遠赤外(テラヘルツ)領域研究の世界的な拠点として注目されています。
センターの概要
本センターが研究している遠赤外領域とは、きわめて広範な波長領域にわたる電磁波の内、可視光から見て赤外の次に波長が長く、およそ1mmから数10ミクロンの、電波と光の中間に位置する電磁波領域を指します。遠赤外領域はテラヘルツ領域と呼ばれることもあります。テラヘルツは周波数の単位で、テラヘルツ波の周波数は、携帯電話等の通信に用いられている電磁波(ギガヘルツ)の1000倍にあたります。
遠赤外(テラヘルツ)領域の電磁波は、光の直進性と電波の透過特性の両方を持ち、21世紀が必要とする画期的な新技術の宝庫です。
この電磁波領域は有効な光源の欠如のため、長年電磁波の未踏領域と呼ばれてきました。このことは逆に、この分野がこれから飛躍的に発展する可能性を秘めていることを意味します。センターでは、独自に開発した高出力遠赤外光源「ジャイロトロン」をさらに高度化する研究開発とともに、高出力遠赤外光源を用いて初めて可能になる遠赤外領域の先進的・先導的研究を行っています。
さらにレーザー光を利用した高いピーク強度のパルステラヘルツ波技術と分光技術を組み合わせたテラヘルツ科学の研究も推進しています。これにより、センターは高出力遠赤外/テラヘルツ波分野の我が国有数の研究拠点となっています。
また、センターは国内外の研究機関とグローバルなネットワークを構築して、研究を推進しており、高出力遠赤外/テラヘルツ波分野における研究開発の世界的拠点としての役割が期待されています。
センターにおける研究開発目標
電磁波の未踏領域を解消するために:
- 高出力遠赤外(テラヘルツ)光源「ジャイロトロン」のさらなる高性能化を目指す。
- 高効率伝送系・高感度検出器等、遠赤外(テラヘルツ)の基礎・基盤技術の研究開発を推進する。
高周波ジャイロトロンの応用研究:
- パルスESR、非線形テラヘルツ波分光などの先進・先導的な計測応用研究を実施する。
- ジャイロトロンによる高出力遠赤外光(テラヘルツ波)を物質の反応/プロセス制御、機能性材料開発等に利用するパワー応用研究を実施する。
テラヘルツ波科学の推進:
- 新方式のテラヘルツ波発生・検出法、テラヘルツ分光法(THz-TDS)の開発により、生体分子や薬剤の計測・イメージング、テラヘルツ波環境計測や不規則凝縮相(溶液等)の超高速ダイナミクス等の研究を推進する。
新学術分野の創成:
- 上記の先導的研究を通じ、基礎物理学、物質・材料科学、エネルギー科学、生命科学等の領域にまたがる高出力遠赤外光(テラヘルツ波)利用による新学術分野の創成を目指す。
福井大学中期目標・中期計画におけるセンターの位置づけ
遠赤外領域の研究は、福井大学の重点研究分野として指定されており、第4 期中期目標・中期計画にも挙げられて
います。
Ⅰ教育研究の質の向上に関する事項
3 研究に関する目標を達成するための措置
(8) 地域から地球規模に至る社会課題を解決し、より良い社会の実現に寄与するため、研究により得られた科学的理論や基礎的知見の現実社会での実践に向けた研究開発を進め、社会変革につながるイノベーションの創出を目指す。
(8)-1 コア技術である高出力遠赤外光源及び遠赤外領域計測技術の更なる先進化と分野融合型の共同研究開発を推進するため、社会問題解決につながる技術のイノベーションを目指し、第3期において実施した遠赤外領域の公募型国内共同研究を継続しつつ、新分野開拓及び分野融合研究を行うとともに、遠赤外領域における国際連携研究ネットワークを拡大・強化する。
対応する中期計画
評価指標 (8)-1-A 遠赤外領域研究に関する国内・国際共同研究の新規実施件数:
第3期(206 件)より 10%以上増加(第4期の合計)
工学系ミッション再定義における位置づけ
本センターが「我が国有唯一で世界最高水準のジャイロトロン」により先端的な研究実績を上げている「遠赤外
領域」は、福井大学の工学系(工学分野)のミッション再定義において強く推進すべき研究分野として指定され
ています。
沿革
1980年代初期 | 研究開始 |
---|---|
1984年 | 70GHz、100GHzの発振に成功(高周波ジャイロトロンとして世界的に注目される)Gyrotron FU Iimage |
1989年 | 380GHz(サブミリ波ジャイロトロンの実現) |
1991年 | 636GHzを達成(周波数を向上させていく) |
1992年 | 工学部附属超伝導磁場応用実験施設を学内措置により設立 |
1993年 | 837GHzを達成 |
1997年 | 889GHzを達成(世界最高周波数記録を保持) |
1999年 | 工学部附属超伝導磁場応用実験施設を発展的に解消し「遠赤外領域開発研究センター」を文部省令に基づく学内共同教育研究施設として設立 |
2005年 | 1013GHzを達成(1テラヘルツのブレークスルー) |
2006年 | 超低温物性実験施設を機能統合 |
2008年 | テラヘルツ科学分野の組織強化 |
2011年 | センターの公募型共同研究を開始 |
2013年 | 「遠赤外領域」が工学系ミッション再定義により福井大学において強く推進すべき分野に指定される |
2016年 | 助教1名の増員による組織強化改組による部門再編および国際研究部門の創設 |
2017年 | 助教1名の増員による組織強化 |