テラヘルツ波を用いた分光・応用研究

 遠赤外応用技術グループでは、テラヘルツ領域の分光研究とその応用研究を行っています。

  • 新規なテラヘルツ波発生・検出法の開発
  • 広帯域テラヘルツ波を用いた光学・分光研究
  • 新規なラマン分光法によるテラヘルツ分光法の開発

 テラヘルツ時間領域分光法(Terahertz-Time Domain Spectroscopy, THz-TDS)では、フェムト秒の時間分解で広帯域テラヘルツ波の時間波形の測定を行い、0.1~5THz のスペクトルを測定することができます。このような実験を行うために、フェムト秒パルスレーザーや光伝導スイッチ素子(THz 波の発生および検出のための素子)を用いています。

テラヘルツ時間領域分光装置

新規なテラヘルツ波発生・検出法の開発― チェレンコフ位相整合を用いたテラヘルツ波の電気光学検出法

 新規なテラヘルツ波の検出法としてチェレンコフ位相整合という方法を用いた電気光学(EO)サンプリング(注)検出法を開発しました。この方法ではテラヘルツ波とプローブ光が交差する角度を調整することで、どのような波長のプローブ光も利用できるという利点があります。さらに従来のように偏光変化を検出するのではなく、強度変化のみを検出するヘテロダイン EO サンプリング法の研究も行っています。

注:電気光学サンプリングとは、電場により特定の結晶(非線形光学結晶)の屈折率が非等方的に変化することを利用して、電磁波の波形をパルスレーザーを用いて時間分解検出する計測手法です。

テラヘルツ波の超集束効果研究

 自由空間を伝搬するテラヘルツ波は、回折限界によってサブミリメートル以下に集光することは困難なこと(集光限界)が知られています。しかし、写真のような金属テーパーと金属平行平板を合わせた金属導波路を用いることによって、簡単にテラヘルツ波を波長よりも小さい領域に集めることが可能となります。これをテラヘルツ波の超集束効果といいます。右図は導波路を透過する前と透過後の THz時間波形です。テラヘルツ波の超集束効果を達成することによって、薄膜や微量サイズの試料に対するテラヘルツ波検査への応用へ展開することが可能となります。われわれは、超集束効果が起こる原因を調べる基礎研究から、テラヘルツ波による薄膜・微量検出の応用研究を行っています。

金属導波路
超集束によって透過したテラヘルツ波

新規なテラヘルツ帯ラマン分光法の開発 ― 時間領域コヒーレントラマン分光法の開発

 テラヘルツ帯の分子振動を調べる新規手法として、時間領域で信号検出を行う「時間領域コヒーレントラマン分光法」の開発を進めています。従来の方法ではテラヘルツ帯の差周波数を持つ、2台の周波数制御された励起レーザーが必要でしたが、新しく開発した手法では、パルスレーザーの周波数分散をうまく制御することで 1台のレーザーで励起可能で、数10GHzの低振動数領域まで観測することが可能です。

時間領域コヒーレントラマン分光法を用いた四塩化炭素のラマンスペクトル例